1. はじめに
Ubuntuは、Linuxディストリビューションの中でも広く利用されているOSであり、サーバーや開発環境としても人気があります。その中で「ユーザー管理」は、システムのセキュリティや運用の観点から重要な要素の一つです。
本記事では、Ubuntuにおけるユーザーの作成方法を解説し、GUIとコマンドライン(CLI)の両方の方法を詳しく紹介します。また、ユーザーにsudo権限を付与する方法や、不要になったユーザーを削除する手順についても説明します。
これを読むことで、Ubuntuのユーザー管理がスムーズに行えるようになり、システムをより安全かつ効率的に運用できるようになります。
2. GUIでのユーザー作成と管理(初心者向け)
Linuxに慣れていない初心者でも簡単にユーザーを作成できる方法として、UbuntuのGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を利用する方法があります。特に、デスクトップ環境を使用している場合は、GUIでの管理が直感的で分かりやすいためおすすめです。
2.1 GUIで新規ユーザーを作成する
- 設定メニューを開く
- 画面左上の「アクティビティ」から「設定」を検索し、開きます。
- 設定メニューの「ユーザー」セクションをクリックします。
- ユーザーの追加
- 画面右上の「ユーザーを追加」ボタンをクリックします。
- 「管理者」または「標準ユーザー」のいずれかを選択します。
- ユーザー名、フルネーム、パスワードを入力します。
- 作成の完了
- 「追加」ボタンを押して、ユーザーが作成されるのを待ちます。
- 作成されたユーザーは、一覧に表示されます。
ポイント:
- 標準ユーザーはシステムの重要設定を変更できません。
- 管理者ユーザーはsudo権限を持ち、システム管理が可能です。
2.2 sudo権限をGUIで設定する
sudo権限を持つユーザーを作成する場合は、「管理者」オプションを有効にするだけでOKです。しかし、既存のユーザーにsudo権限を追加する場合は、以下の手順を実行します。
- 設定メニューから「ユーザー」を開く
- 変更したいユーザーを選択
- 「管理者」にチェックを入れる
- 適用して変更を保存
これで、そのユーザーはsudo権限を持つようになります。
2.3 GUIでのユーザー削除
不要になったユーザーを削除するには、以下の手順を実行します。
- 設定メニューの「ユーザー」セクションを開く
- 削除したいユーザーを選択
- 「削除」ボタンをクリック
- ホームディレクトリのデータも削除するか選択
- 削除を確定
注意:
- ユーザーを削除すると、ホームディレクトリのデータも削除される可能性があるため注意が必要です。
- 必要に応じて、データをバックアップしておくことをおすすめします。
3. コマンドライン(CLI)でのユーザー作成(中級者・管理者向け)
Ubuntuでは、コマンドラインを使用することで、より詳細な設定を行いながらユーザーを作成することが可能です。サーバー管理やリモート操作を行う場合、GUIではなくCLIでの操作が必須となることが多いため、Linuxに慣れておくと便利です。
ここでは、Ubuntuでユーザーを作成するための主要なコマンドである adduser
と useradd
の違いや使い方を詳しく解説します。
3.1 adduser
コマンドを使用したユーザー作成
adduser
コマンドの基本
Ubuntuでは、adduser
コマンドを使うことで簡単に新しいユーザーを作成できます。このコマンドは対話形式で実行され、必要な情報を入力するだけでユーザーアカウントが作成されます。
手順
- ターミナルを開く(
Ctrl + Alt + T
またはSSHで接続) - 以下のコマンドを実行
sudo adduser 新しいユーザー名
- システムがいくつかの情報入力を求めるので、指示に従って入力する
- パスワードを設定(必須)
- フルネーム、電話番号などの入力(省略可)
- 最後に 「情報が正しければ ‘Y’ を押してください」と表示されるので、確認後 「Y」 を入力
実行結果(例)
Adding user `testuser' ...
Adding new group `testuser' (1001) ...
Adding new user `testuser' (1001) with group `testuser' ...
Creating home directory `/home/testuser' ...
Copying files from `/etc/skel' ...
Enter new UNIX password:
Retype new UNIX password:
passwd: password updated successfully
Changing the user information for testuser
Enter the new value, or press ENTER for the default
Full Name []: Test User
Room Number []:
Work Phone []:
Home Phone []:
Other []:
Is the information correct? [Y/n] Y
3.2 useradd
コマンドとの違い
Ubuntuには、adduser
とは別に useradd
というコマンドもあります。useradd
は低レベルのコマンドで、ユーザーの作成を行いますが、デフォルトの設定ではホームディレクトリが作成されません。
useradd
コマンドの基本
以下のように実行すると、新しいユーザーを作成できます。
sudo useradd -m -s /bin/bash 新しいユーザー名
オプションの説明:
-m
: ホームディレクトリを自動で作成-s /bin/bash
: デフォルトのシェルを Bash に設定
useradd
を使った場合の注意点
- ホームディレクトリがデフォルトでは作成されない →
-m
オプションが必要 - パスワードが設定されていない状態になる →
passwd
コマンドで設定が必要 adduser
よりも詳細な設定が求められる
実際の使い分け
コマンド | ホームディレクトリ | パスワード設定 | 推奨用途 |
---|---|---|---|
adduser | 自動作成 | 自動で設定可能 | 一般的なユーザー作成 |
useradd | 作成されない(-m 必要) | 別途 passwd で設定 | 高度な管理が必要な場合 |
adduser
は初心者でも使いやすい設計になっているため、特に理由がない限りは adduser
を推奨します。
4. sudo権限の付与・削除
Ubuntuでは、通常のユーザーとは別に 管理者(sudoユーザー) を設定することができます。
sudo権限 を持つユーザーは、システムの重要な変更(ソフトウェアのインストール、設定変更、ユーザー管理など)を行うことが可能です。
本セクションでは、sudo権限を付与・削除する方法 を解説し、管理者ユーザーの適切な設定手順を紹介します。
4.1 sudo権限を付与する方法
方法1: usermod
コマンドでsudoグループに追加
新しいユーザーに sudo権限 を付与する最も簡単な方法は、usermod
コマンドを使用することです。
手順
- ターミナルを開く
- 以下のコマンドを実行する
sudo usermod -aG sudo ユーザー名
- 変更を適用するために、ユーザーをログアウト・再ログイン
- sudo権限の確認
groups ユーザー名
実行結果に sudo
が含まれていれば成功。
方法2: gpasswd
コマンドを使用
gpasswd
コマンドを使用して、ユーザーを sudoグループ に追加することもできます。
sudo gpasswd -a ユーザー名 sudo
このコマンドでも usermod
と同様に sudo権限を付与できます。
4.2 sudo権限の削除
方法1: deluser
コマンドを使用
sudoグループからユーザーを削除する場合、deluser
コマンドを使用します。
sudo deluser ユーザー名 sudo
実行後、ユーザーは管理者権限を失い、一般ユーザーとなります。
方法2: gpasswd
コマンドでグループから削除
gpasswd
コマンドを使用して、sudoグループからユーザーを削除することもできます。
sudo gpasswd -d ユーザー名 sudo
sudo権限が適用されない場合の対処法
- ユーザーがsudoグループに追加されているか確認
groups ユーザー名
- 変更後にログアウト・再ログイン
- sudoパッケージがインストールされているか確認
dpkg -l | grep sudo
必要なら以下でインストール:
sudo apt update && sudo apt install sudo
4.3 sudo権限のセキュリティに関する注意点
- 不要なユーザーにsudo権限を与えない
- rootアカウントでの作業を避ける
- sudoのログを定期的に確認
cat /var/log/auth.log | grep sudo
このように監視を行うことで、不審なsudoコマンドの使用をチェックできます。
5. ユーザーの削除方法
Ubuntuで不要になったユーザーを削除する際には、単にアカウントを削除するだけでなく、ホームディレクトリの削除やグループの管理 も適切に行う必要があります。
本セクションでは、deluser
や userdel
コマンドを使用した削除方法、削除時の注意点について解説します。
5.1 deluser
コマンドを使用したユーザー削除
以下のコマンドで、指定したユーザーを削除できます。
sudo deluser ユーザー名
✅ 実行例
$ sudo deluser testuser
Removing user `testuser' ...
Warning: group `testuser' has no more members.
Done.
このコマンドを実行すると、ユーザーアカウントは削除されますが、ホームディレクトリはそのまま残ります。
5.2 ホームディレクトリも削除する場合
✅ ホームディレクトリも削除する場合
sudo deluser --remove-home ユーザー名
✅ 実行例
$ sudo deluser --remove-home testuser
Removing user `testuser' ...
Removing home directory `/home/testuser' ...
Done.
🚨 注意点:
削除したデータは元に戻せないため、重要なデータは事前にバックアップを取っておきましょう。
tar -czf /backup/testuser_backup.tar.gz /home/testuser
5.3 userdel
コマンドを使用したユーザー削除
userdel
コマンドを使用する場合、以下のコマンドでユーザーを削除できます。
sudo userdel ユーザー名
ホームディレクトリも削除する場合は -r
オプションを付けます。
sudo userdel -r ユーザー名
5.4 ユーザー削除後に残るファイルの処理
削除したユーザーが所有するファイルを検索するには、以下のコマンドを実行します。
sudo find / -uid $(id -u 削除したユーザー名) 2>/dev/null
不要なファイルを削除する場合は、次のコマンドを実行してください。
sudo find / -uid $(id -u 削除したユーザー名) -exec rm -rf {} \;
🚨 注意: 誤って他の重要なファイルを削除しないように、実行前に確認すること。
6. ユーザーとグループの確認方法
Ubuntuでは、システム内に存在するユーザーやグループを確認することが重要です。
管理者がどのユーザーが存在し、どのグループに所属しているのかを把握することで、適切な権限管理を行うことができます。
6.1 既存ユーザーの一覧を確認する
方法1: /etc/passwd
ファイルを確認
/etc/passwd
ファイルには、システムに登録されているユーザーアカウント情報が保存されています。
cat /etc/passwd
✅ 表示内容の例
root:x:0:0:root:/root:/bin/bash
daemon:x:1:1:daemon:/usr/sbin:/usr/sbin/nologin
testuser:x:1001:1001:Test User,,,:/home/testuser:/bin/bash
方法2: getent
コマンドを使用
getent passwd
特定のユーザーを検索する場合:
getent passwd testuser
6.2 グループの一覧を確認する
方法1: /etc/group
ファイルを確認
cat /etc/group
方法2: 特定のグループのユーザーを確認
getent group sudo
✅ 出力例
sudo:x:27:user1,user2,testuser
6.3 ユーザーが所属しているグループを確認する
groups ユーザー名
✅ 実行結果
testuser : testuser sudo developers
または、id
コマンドで詳細情報を取得できます。
id ユーザー名
✅ 出力例
uid=1001(testuser) gid=1001(testuser) groups=1001(testuser),27(sudo),1002(developers)
7. FAQ(よくある質問)
Ubuntuでのユーザー管理に関する操作は、初心者にとっては慣れるまで少し難しく感じることがあります。本セクションでは、よくある質問(FAQ) をまとめ、ユーザー作成、sudo権限の設定、削除、グループ管理 などに関する疑問を解決します。
7.1 adduser
と useradd
の違いは?
✅ adduser
の特徴
- 対話形式で使いやすい
- ホームディレクトリが自動作成される
- パスワードの設定もその場で可能
✅ useradd
の特徴
- より低レベルなコマンド
- ホームディレクトリがデフォルトでは作成されない(
-m
オプションが必要) - パスワード設定を別途行う必要がある
✅ どちらを使うべき?
通常のユーザー作成には adduser
を推奨。useradd
は、スクリプトで一括作成する場合や細かい設定が必要な場合に適しています。
7.2 sudo 権限を付与する方法は?
sudo usermod -aG sudo ユーザー名
変更を適用するには、一度 ログアウト→再ログイン する必要があります。
7.3 sudo ユーザーを削除するとどうなる?
sudo deluser ユーザー名 sudo
すべてのsudoユーザーを削除すると、管理者権限がなくなり操作が制限されるため注意。
7.4 削除後にファイルが残る理由
削除したユーザーが所有するファイルを検索するには、以下を実行します。
sudo find / -uid $(id -u 削除したユーザー名) 2>/dev/null
不要なファイルを削除する場合:
sudo find / -uid $(id -u 削除したユーザー名) -exec rm -rf {} \;
8. まとめ
本記事では、Ubuntuにおけるユーザー管理の基本から応用まで を詳細に解説しました。ユーザー作成、sudo権限の設定、削除、グループ管理など、システム管理に必要な操作を網羅しています。
8.1 主要なポイントのおさらい
1. ユーザーの作成
✅ GUI(初心者向け): 「設定」→「ユーザー」→「追加」で簡単に作成可能
✅ CLI(中級者・上級者向け):
sudo adduser ユーザー名
2. sudo権限の付与
sudo usermod -aG sudo ユーザー名
3. ユーザーの削除
sudo deluser ユーザー名 --remove-home
4. ユーザーとグループの確認
cat /etc/passwd
cat /etc/group
8.2 ユーザー管理を効率化するためのベストプラクティス
1️⃣ 不要なユーザーを定期的に整理
2️⃣ sudo権限を最小限に抑える
3️⃣ ユーザーの活動をログで監視
cat /var/log/auth.log | grep sudo
4️⃣ バックアップを確実に取る
tar -czf /backup/ユーザー名.tar.gz /home/ユーザー名
8.3 最後に
Ubuntuのユーザー管理を適切に行うことで、システムの安全性と効率性 を向上させることができます。本記事の内容を活用し、適切な管理を実践してください。