1. はじめに
Ubuntuは、オープンソースのLinuxディストリビューションとして人気のあるOSですが、長期間使用しているとシステムが不安定になったり、設定ミスによってトラブルが発生することがあります。そのような場合、再インストールを行うことで、クリーンな状態に戻し、快適な環境を再構築することができます。
本記事では、Ubuntuの再インストール方法を初心者向けと上級者向けに分けて詳しく解説し、再インストール後の設定、トラブル対策、FAQ までを網羅します。
2. 再インストール前の準備
Ubuntuを再インストールする前に、必要な準備を整えることが重要です。特にデータのバックアップと適切なUbuntuのバージョン選定は、スムーズな再インストールに欠かせません。
2.1 バージョン選定(LTS vs 最新リリース)
Ubuntuには、LTS(Long Term Support)版と最新リリース版の2種類があります。それぞれの特長を理解し、自分の用途に適したものを選びましょう。
バージョン | 特徴 |
---|---|
LTS(長期サポート版) | 5年間の公式サポートあり。安定性重視。企業やサーバー向けに最適。 |
最新リリース版 | 半年ごとに新機能を提供。サポート期間は9か月。最新技術を試したい方向け。 |
基本的に 安定した環境を求める場合はLTS版(例: Ubuntu 22.04 LTS)を選ぶ のがおすすめです。
2.2 データのバックアップ(Timeshift・Deja Dupの活用)
Ubuntuを再インストールすると、既存のデータが消える可能性があるため、重要なデータを事前にバックアップしておく必要があります。
バックアップ方法
- GUIを使用する場合
- 「Deja Dup(バックアップツール)」を使用することで、簡単にデータを外部ストレージやクラウドに保存できます。
- 手順: 「設定」→「バックアップ」→「保存先を選択」→「今すぐバックアップ」
- ターミナルを使用する場合
- 「Timeshift」を活用すると、システム全体のスナップショットを作成できます。
- インストール方法
sudo apt install timeshift
- スナップショットの作成
sudo timeshift --create --comments "Backup before reinstall"
2.3 インストールメディアの作成(USB / DVD)
UbuntuのISOファイルをダウンロードし、インストール用のメディアを作成します。
手順
- 公式サイトからISOファイルをダウンロード
- Ubuntu公式サイト から最新版のISOを取得。
- USBメディアを作成
- Windowsの場合: 「Rufus」ツールを使用
- Ubuntuの場合:
dd
コマンドまたは「Startup Disk Creator」アプリを使用sudo dd if=ubuntu.iso of=/dev/sdX bs=4M status=progress
- BIOS/UEFIでUSBから起動できるように設定
- PCを再起動し、BIOS(F2, F12, Delキー)で起動順序を変更。
3. Ubuntuの再インストール手順
Ubuntuの再インストールには、標準インストール(初心者向け) と カスタムインストール(上級者向け) の2つの方法があります。
3.1 標準インストール(初心者向け)
シンプルな再インストール方法で、すべてのデータを消去してクリーンインストールを行います。
手順
- USBメディアから起動
- PCをUSBメディアから起動し、「Ubuntuを試す」または「Ubuntuをインストール」を選択。
- インストールオプションを選択
- 「ディスクを消去してUbuntuをインストール」を選択(データを完全削除)。
- 言語、タイムゾーン、キーボード設定
- 日本語キーボードを選択。
- ユーザー名とパスワードを設定
- 再インストール後のログイン情報を作成。
- インストール開始
- 数十分でインストール完了し、再起動。
3.2 カスタムインストール(上級者向け)
デュアルブート環境を維持したり、特定のパーティションを保持しながらUbuntuを再インストールする方法です。
手順
- 「インストールの種類」で「カスタムインストール」を選択
- パーティションを手動で設定
/
(ルート)をフォーマット/home
を保持することで、ユーザーデータを維持可能- LVMや暗号化(LUKS)を設定する場合はこの段階で選択
- その他の設定は標準インストールと同様
- 言語やユーザー設定を行い、インストールを進める。

4. 再インストール後の初期設定
Ubuntuを再インストールした後、基本的なセットアップを行います。
4.1 システムアップデートの実行
インストール直後は、システムを最新の状態に更新することが重要です。以下のコマンドを実行して、パッケージを最新化しましょう。
sudo apt update && sudo apt upgrade -y
4.2 必要なアプリの再インストール
Ubuntuの再インストール後は、普段使用していたアプリケーションを再インストールする必要があります。
sudo apt install -y vim git curl
4.3 日本語環境の整備
再インストール後、日本語入力が有効になっていない場合があります。Mozc(Google日本語入力エンジン)をインストールして設定しましょう。
sudo apt install -y ibus-mozc
その後、システムを再起動し、「設定」→「地域と言語」からMozcを有効にします。
5. よくあるトラブルと対処法
Ubuntuの再インストール後に発生する可能性のあるトラブルとその対処法を紹介します。
5.1 Ubuntuのインストールが止まる・フリーズする
原因と対処法
- USBメディアの作成ミス
→ ISOファイルのチェックサムを確認し、再作成する。 - UEFI/レガシー設定の不一致
→ BIOS設定で適切なブートモードを選択。 - ハードウェアの互換性問題
→ 「Ubuntuのセーフグラフィックスモード」で起動する。
5.2 ブートしない・GRUBエラーの対処法
Ubuntuの再インストール後、GRUBブートローダーが正しく設定されていないと、OSが起動しないことがあります。以下の手順で修復できます。
GRUBの修復手順
- ライブUSBでUbuntuを起動
- ターミナルを開いて以下を実行
sudo mount /dev/sdX /mnt
sudo grub-install --root-directory=/mnt /dev/sdX
sudo update-grub
※ sdX
はUbuntuがインストールされているディスクに置き換える。
- 再起動してGRUBが修復されたか確認
5.3 NVIDIA・Wi-Fiなどのドライバが動作しない
NVIDIAドライバのインストール
sudo ubuntu-drivers autoinstall
sudo reboot
Wi-Fiドライバが見つからない場合
sudo apt install firmware-b43-installer
このコマンドを実行した後、PCを再起動してWi-Fi接続を確認してください。
6. FAQ(よくある質問)
Ubuntuの再インストールに関して、よくある質問とその回答をまとめました。
6.1 再インストールせずにシステムを初期化できる?
Ubuntuには、Windowsの「リセット」に相当する機能はありませんが、以下の方法でシステムを初期化できます。
sudo apt autoremove --purge
sudo apt clean
または、ホームディレクトリ以外を削除し、必要なパッケージを再インストールすることで、ほぼ初期状態に戻せます。
6.2 デュアルブート環境でUbuntuだけを再インストールできる?
はい、可能です。再インストール時に「カスタムインストール」を選択し、Windowsのパーティションを削除しないよう注意してください。
6.3 Ubuntuのインストールに失敗した場合の対処法は?
- インストール中にエラーが出る場合
→ USBメディアを再作成する。 - インストール後に起動しない場合
→ GRUBを修復する(手順は「5.2」を参照)。
6.4 再インストール後にデータを復元する方法は?
バックアップツール(Timeshift、Deja Dupなど)を使用していれば、バックアップから復元できます。
sudo timeshift --restore
6.5 Ubuntuを再インストールしても動作が遅い・不安定なのですが?
ハードウェアの問題(SSDの劣化やRAM不足)の可能性があります。以下のコマンドで負荷を確認してください。
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SSDの健康状態を確認する場合:
sudo smartctl -a /dev/sdX
問題がある場合、ハードウェアのアップグレードを検討してください。