1. 固定IPアドレスとは?
固定IPアドレスの基本
IPアドレスは、ネットワーク上で各デバイスを識別するための一意の番号です。ネットワークのほとんどの環境では、DHCP(動的ホスト構成プロトコル)を使用して動的にIPアドレスを割り当てますが、特定の用途では「固定IPアドレス」を使用することが有効です。固定IPアドレスは、デバイスが再接続しても同じIPアドレスが割り当てられるため、常に一定のアドレスでアクセスすることが可能です。
固定IPアドレスのメリット
固定IPアドレスの主な利点には以下があります:
- 安定した接続:再接続や再起動後も同じアドレスが使用されるため、サーバーやプリンター、ネットワークストレージ(NAS)などのデバイスに対して安定した接続が可能です。
- アクセス管理の簡便化:リモートアクセスやポートフォワーディングの設定が容易になります。例えば、SSHやリモートデスクトップ接続を設定する際に、同じIPアドレスを使用することで設定が簡素化されます。
- ネットワークのセキュリティ向上:固定IPアドレスを利用することで、特定のデバイスへのアクセスを制限しやすくなり、セキュリティ面での管理が強化されます。
2. Ubuntuで固定IPアドレスを設定する準備
使用しているUbuntuバージョンの確認
まず、Ubuntuのバージョンによって固定IPアドレスの設定手順が異なることがあるため、自分のUbuntuバージョンを確認します。バージョンの確認には次のコマンドを使用します。
lsb_release -a
Ubuntu 17.10以降はNetplan
がネットワーク設定ツールとして導入されています。Netplanは、ネットワークの設定を簡潔に行うためにYAML形式の設定ファイルを使用します。
Netplanの確認とインストール
Netplanがインストールされているかどうかを確認するには、以下のコマンドを使用します。
netplan --version
もしNetplanがインストールされていなければ、以下のコマンドでインストールします。
sudo apt install netplan.io
これで、固定IPアドレスの設定準備が整いました。
3. Netplanでの固定IPアドレス設定手順
YAMLファイルの作成
Netplanで固定IPを設定するには、まず設定ファイルを作成します。設定ファイルは通常/etc/netplan/
に保存され、ファイル名は任意ですが、一般的には「99-config.yaml」のように数字を使った命名が推奨されます。以下のコマンドでファイルを作成し、エディタで開きます。
sudo nano /etc/netplan/99-config.yaml
YAMLファイルの編集
次に、作成したYAMLファイルに固定IPの設定を記述します。
network:
version: 2
renderer: networkd
ethernets:
enp3s0:
dhcp4: false
addresses: [192.168.1.100/24]
gateway4: 192.168.1.1
nameservers:
addresses: [8.8.8.8, 1.1.1.1]
enp3s0
はネットワークインターフェース名です。正しいインターフェース名を確認するためにip addr
コマンドを使用します。addresses
には、割り当てたい固定IPアドレスを記入し、サブネットマスクを指定します(例:192.168.1.100/24)。gateway4
にはルーターのIPアドレスを指定します。nameservers
にはDNSサーバーのアドレスをリスト形式で指定します。GoogleのDNSサーバー(8.8.8.8など)を使うことが一般的です。
設定の保存と適用
ファイルを保存したら、次のコマンドを実行して設定を適用します。
sudo netplan apply
これにより、ネットワークが再構成され、固定IPアドレスが適用されます。
4. 設定の確認とトラブルシューティング
設定の確認方法
設定が正しく適用されたか確認するために、次のコマンドを使用します。
ip addr show enp3s0
このコマンドでenp3s0
インターフェースに割り当てられたIPアドレスが表示され、設定が成功したかどうかを確認できます。
よくあるエラーとその対処方法
インデントエラー
YAMLファイルでは、インデント(行頭のスペース)が非常に重要です。インデントが不正確だとエラーが発生します。インデントの誤りが原因で「Error in network definition」と表示された場合は、行頭のスペースが正しく配置されているか確認してください。
ネットワーク接続が不安定
固定IPアドレスを設定後、ネットワーク接続が不安定になる場合は、アドレスの重複が原因であることが多いです。別のデバイスと同じIPアドレスを使用していないか確認し、必要に応じてアドレスを変更してください。
5. 応用編:複数ネットワークインターフェースとブリッジ接続
複数インターフェースへの設定
一部のネットワーク環境では、複数のネットワークインターフェースを使用して異なるIPアドレスを割り当てる必要があります。Netplanを使用することで、複数のインターフェースを同時に設定することが可能です。以下はその例です。
network:
version: 2
renderer: networkd
ethernets:
enp3s0:
dhcp4: false
addresses: [192.168.1.100/24]
enp4s0:
dhcp4: false
addresses: [192.168.2.100/24]
この設定により、enp3s0
とenp4s0
の2つのインターフェースに異なるIPアドレスを割り当てています。
VLANやブリッジの設定
ブリッジ接続やVLAN設定は、特に仮想マシンやコンテナ環境での利用に便利です。Netplanを使用すれば、簡単にブリッジ接続を構成できます。以下はブリッジ接続の設定例です。
network:
version: 2
renderer: networkd
ethernets:
eth0:
dhcp4: false
bridges:
br0:
interfaces: [eth0]
addresses: [192.168.1.50/24]
gateway4: 192.168.1.1
この設定により、eth0
インターフェースをブリッジbr0
に接続し、固定IPアドレスを割り当てています。
6. 固定IPアドレス設定時の注意点
IPアドレスの重複を避ける
固定IPアドレスを設定する際は、ネットワーク内で他のデバイスとIPアドレスが重複しないように注意が必要です。重複した場合、通信に問題が生じ、ネットワーク接続が不安定になります。IPアドレスの競合を避けるために、設定前に使用中のアドレスを確認しましょう。
ネットワーク構成の確認
サブネットマスクやゲートウェイの設定は、ネットワークの構成に依存します。特にサブネットマスクが誤って設定されると、同一ネットワーク内のデバイスと通信できなくなる可能性があるため、ルーターやネットワーク管理者と相談のうえ、正しい値を使用してください。